なぜ、新人漫画家は消えてしまうのか?その5

 ヤバい担当に当たると本当に大変です

 

 

ネームがOKをもらえると、次は原稿作業へ入ります。

 

 当時私はアナログでしか原稿が描けませんでした。しかし、子育てをしている間に、

世間はいつの間にかデジタル派が多くなっていました。3度目の連載まではアナログ

で仕上げていたのですが、4度目の連載が始めるとき「うちのWeb出版社でアナロ

グで描いている人は数名ですよ。あとはみんなデジタルです」とクリップスタジオで

仕上げることを進めてくるので、思い切ってデジタルでやってみることにしました。

たぶん編集さんもアナログで渡されると、あとの作業が大変なんだと思います。

デジタルだと何かあれば修正できますしね。

 

いきなりフルデジタルは無理なので、アナログでペン入れをし、ベタを塗り、背景

まで仕上げてからスキャンして、最後だけクリップスタジオで仕上げることにしま

した。すると…なぜか担当は微妙な反応。何か納得がいかないようです。「この

トーンはまったく綺麗ではない。ちゃんと貼ってますか?設定がおかしいんじゃな

いですか。」「はっきり言ってよくないですね。この原稿は綺麗ではありません」

と言ってきます。でも私は、実はデジタルに慣れているアシスタントさんに手伝っ

て貼ってもらったので、貼り方や設定に問題はないはずなんですよね。

以前は担当は、アナログ原稿を送るたびに「綺麗です!」と言って感動していまし

た。そもそも、今回はデジタルで仕上げたとは言っても、線画は全てアナログで仕上げ

ていて、デジタルはトーンのみ。確かにアナログとデジタルのトーンは全然違い

ます。ただのグラデトーンや、アミトーンでもアナログのトーンはとても美しいです。

(私が使っていたのはICだった)それに比べ、同じ貼り方をデジタルですると、

なんだか味気ない感じになります。機械的な感じになってしまうんですよね。

 

でもデジタルでしかできない貼り方はあるし、それを模索していきたいわけですが

担当は「以前のアナログの時の原稿と、変わらないようにしてください」とやや

キレています。どうやら担当はたぶん、アナログとデジタルのトーンが違うと

いうことをこの時初めてわかったようです。そして、担当はアナログの原稿がとても

好きなようです。(たぶん今まで自分でもわかっていなかった)あれだけデジタルを

進めてきたのに、急に何かとデジタルで描くことをディスることが多くなりました。

 

「自分がアナログに戻してほしいって言ったら、戻してくださいね」

「なんか最近、デジタルで描く人ってみんな同じに見えてきてなんだかなぁって

感じです」「最近うちの編集部でもフルデジタルにした人がいて、変になったねって

編集部みんなで言ってるんですよ」「雑誌とかの漫画家で、デジタルに変えても

まったく違和感ない人もいるのになんであなたはできないんですか」

 

等、言ってきます。正直、そんなことを言われても…という感じなんですが。

アナログは15年やってきたので、その間試行錯誤してきました。だからできるのは

当然で、突然始めたデジタルが同じようにうまくできるわけがないんですね。

私に限らず、デジタルに変えたばかりの人は、これから試行錯誤して自分なりの

やり方を見つけていくしかないし、そもそもやらないことにはできるようになりま

せん。が、担当は漫画の作画に関してはまったく知らないので、そんなことはわか

りません。デジタルを10年やってる人も、始めたばかりの人も同じようにできると

思っているようです。

 

デジタル仕上げに変えると、web出版社はミスがないか、フキダシ書き忘れはない

か絵がおかしな所はないかチェックします。あれば、こちらで修正してまた送り

ます。通常、下絵のチェックをしてもらっていれば、フキダシの位置、人物の配置

ポーズ等は大丈夫なはずなんですが、担当はデジタルならば簡単に直しができると

思っているようで、「絵が隠れているのでフキダシをずらしてください」「人物

の位置をやっぱりこっちに」「このポーズはやっぱり変更してください」等、

言ってきます。正直、線画・背景・ベタはアナログなのでそういう修正ならペン

入れ前に言ってほしいんですが、担当はそこの所もよくわかっていなかったようです。

 

 

そこで6作目の連載が始まる前に、次は違う所で描いてみたいなぁと思い、Cという

Web出版社に原稿を送ってみました。すると、そちらからも連載のお話をいただき

ました。(このCというWeb出版社も、誰にでも連載をあげている)今まで描いて

いた所は実は2か月に一本だったので、時間が余っていたし、何より収入が安定して

いませんでした。なのでその空いている一か月に描けたらと思ったのです。

 

すると担当は「ダメです、許しません」と言います。「お金が欲しいんですか?」

「ちゃんと印税も稿料もあげてるでしょう」等、言ってきます。いや、正直、

原稿料も印税もかなり少なく、カツカツでした。

 

そして「何かの合間に描いた雑な漫画なんかいりません」「アシスタントが手伝った

漫画はいりません」とも言います。でも、そこのWeb出版社にも掛け持ちで描いて

いる漫画家はたくさんいました。なんなんでしょうね…。

 

仕方がないので、CというWeb出版社には読み切りのみでお願いすることにしま

した。が、なぜかそのとたんに担当がCというWeb出版社と〆切をわざとぶつけ

てくるんですよね。今まで、二カ月にに1本だったのに急に「これからは毎月書いて

ください」と言い出し、CというWeb出版社の原稿の真っ最中だということを

わかっていて、その最中に下描きから仕上げまで5日で仕上げてください」

「絶対丁寧に仕上げてくださいよ」と言ってくるようになりました。漫画を描く人

なら、どれだけ大変なことかわかりますよね。

「週間連載漫画家じゃないのに、そんなことできるわけねぇだろ!」とさすがに

キレそうになりましたが、なんとか半年間そのペースで描き切ることができました。

技としては、ネームの返事待ち・直しの最中に、先にクリスタで背景を描きトーン

で仕上げてました。枠とフキダシ・描き文字も書いていました。デジタルで描くと

担当が怒るのですが、もう間に合わないのでしれっと描いておいてあとで合成

してましたね。そして二日で下描きを描き、三日で人物のペン入れをしたら髪を

墨汁で塗って(ここは担当がアナログじゃないと許さない)すぐにアシスタント

さんに渡してトーンを貼ってもらってました。最後に背景を合成して完成です。

そして家の食事も全部レトルト・冷凍・配達でした。子供はガン無視です。

朝8時から深夜の1時まで描いて4、5時間だけ寝てました。(ちなみに普段の私は

8~10時間睡眠ですよ!)

 

実はこのペースで描いている間、ものすごく、髪が抜けました。本当にごっそり

抜けました。主に上半分のほうですね。30代女性なのに、かなり薄くなってしまい

ました。(この連載が終わったあとは、すぐにどんどん生えてきて元に戻りました

よ!)やはり睡眠を削ってまで漫画を描くというのは良くないですね。水木しげる

先生が生前言っていた通り、「周りはたくさん描いてどんどん死んでいった。自分は

たくさん寝てゆっくり描いていたからここまで長生きできた」という言葉は本当かも

しれないですね。水木先生、私もこれからはたくさん睡眠を取ってのんびり描いてい

きます!

 

その後

 

ということで、実はこのあと私は数か所のWeb出版社で漫画を描きました。

Web出版社というのは、本当にやり方・考え方がさまざまで、入ってみる(描いて

みる)までわからない。編集も、元雑誌の編集者から、ただの素人までいます。

原稿料・印税の条件も全然違うようです。

ちなみに、あの担当は他の漫画家からもTwitterで文句言われてました。

たぶん本当に少し変な人なんでしょうね。

 

そして、私はその後、とある女性漫画誌に拾っていただきお仕事をもらえるように

なりました。やはり大手出版社のいい所は、印税がしっかりもらえることだと思い

ます。原稿料や印税がごまかされるようなことがありません。

 

でも私がまたこうやって雑誌で仕事がもらえるようになったのは、Web出版社で

しばらく描いていたからだと思います。いろいろありましたが、やはり描くことで

絵も話もある程度上手くなりました。すっかりクリスタも使えるようになりました。

そして何年も描いていないと、自分の絵や話が前の時代のままになってしまうんで

すよね。やはり、定期的に描くことは大事だと痛感しました。

 

 

それからはWeb出版社では描いていないんですが、もし雑誌での仕事がなくなれ

ば、またWeb出版社で描きたいと思っています。

もし雑誌の漫画家を辞めてしまった人・もしくまだデビューできない人はこんな道

もアリかなと思いますよ。とにかく、漫画家で成功する人というのは、才能うんぬん

よりしつこく描く人だと思ってます!

 

なのでみなさん、このように今の時代いくらでもチャンスはあるのでがんばって

くださいね。

 

 

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